音楽

【FUJI ROCK直前特集 Part.2】音楽に政治を持ち込むのは是か?非か?をケンドリック・ラマーから考える

出典:kendricklamar.com

いよいよ今週末に迫ったフジロック。
ボブ・ディランの来日が注目されているが、同時に話題なのはケンドリック・ラマーだ。今年のグラミー賞でも確実視されていた主要部門の受賞は逃すものの(賛否両論ではあるが)ラップ部門中心に5部門を制覇した。世界的に大流行した映画『ブラック・パンサー』の音楽も全面手掛けるなど世界で最もアーティスト・パワーがあるミュージシャンと言っても過言ではないだろう。
アメリカだけではないが、社会に充満する閉塞的なナショナリズムに対する不満を人々が持った時に頭角を現し、アメリカ社会全体の歪みをガツンと批判したのがケンドリックだった。白人警官による黒人への暴力が世界中で取り立たされた際に、彼の「Alright」という曲が注目を浴び、ケンドリックは自身の政治的意見を最小限に抑えているが、彼自身が望むか否かを問う前に反トランプの象徴としての期待と重圧を背負うことになる。(ただ、彼の作品には自分は専制君主ではないという弱みも見せつけていることも忘れてはならない。)
後に、「Alright」の一節《We gon’ be alright》が、ポリスハラスメントとか黒人差別に抗議するデモでも大合唱され、人種差別発言をしていたトランプ大統領の、シカゴの選挙集会が中止になる騒ぎとなった。
ヒップホップの曲でここまで直接的に政治的に影響力を持ったっていうのは初めてのことなんじゃないかと言う異例の現象である。

そんなケンドリックがフジロックにやってくる。
日本では音楽に政治を持ち込むことに否定的な意見が多く飛ぶ。数年前のフジロックにはSEALDsの奥田氏がゲストに呼ばれたりもしたが、フェスは独自の主張をするという側面があるということだ。去勢された遊園地のような邦楽界隈のロック・イベントはフェスと言えようか?
アメリカでは真逆でミュージシャンにこそ政治的立場を明確にすることが求められる。先の大統領選で、それをしなかったテイラー・スイフトが槍玉に挙げられ大批判されたのも記憶に新しい。
そもそも、時の政権を批判すると左翼だとか売国奴とレッテルを貼る短絡的な思考こそ幼稚だ。愛国がゆえの批判もある。批判を許さない政治は、もうそれは民主国家ではなく独裁国家である。現に混沌とした2018年の日本にやって来るケンドリック・ラマーの来日記念ポスターが森友学園の公文書を彷彿とさせる黒塗り書類の上に、彼の最新作のタイトルでもある『DAMN』(クソが!)と書かれた強烈過ぎるデザインで話題を呼んだ。マスコミは総無視したが。
これが国会議事堂前、霞が関の駅のホームに何枚も貼られたというから驚きである。ケンドリック側が、今回の来日公演を本気で挑もうとしている気迫さえ感じる。



2015年にサザンが世界平和を歌うも捻た曲解で言われなき批判を受けたことを発端に、日本の音楽界は飼いならされた犬猫のように大人しい。政治発言などするようなもんなら批判の集中砲火を喰らう。忌野清志郎がロックで主義主張をしていた時代が懐かしい。ゆずなんか清志郎の「憧れの北朝鮮」を引き合いに出して、言いたいことを歌うとするが靖国とか国歌を描いたり、RADWIMPSは意味不明な文脈でそれっぽい軍歌を歌ったり、権力に媚びてるとまでは言わないが、保守化ポップが増えている。人が思うことはそれぞれだ、悪いと言わない。自分勝手にミュージシャン像の理想を問うてるだけなので、お構いなく。
そんな中でも、斉藤和義は紅白で「反原発」の主張が英語で書かれたギターのストラップを付けたり、アジカンの後藤も何かと反政府的なコメントを発したり、SKY-HIも共謀罪の強行採決に疑問を呈し「キョウボウザイ」という曲を緊急発表するという粋な計らいを見せた。骨のある男だ。保守化が進み、それに歯向かうものは糾弾される風潮。言語統制される日本では段々と表現が委縮されていく。それではいけないと気付かせてくれるような、ミュージシャンとして政治とどう対峙すべきか、主義主張のあるパフォーマンスとは何なのか、フジロックのケンドリック・ラマーから目が離せない。



(文・ROCKinNET.com編集部)
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