映画レビュー

『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬服!

© 石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会


男性にアダルトビデオを見て幻想を抱くなと、恋愛ドラマを見て幻想を抱いている女子が言う。
女子会の下ネタは男性が想像する以上にエグイとドヤ顔で暴露する女性に対して、どう犯してやろうかと男子達はビール片手に彼女との妄想SEXの話をする。
「俺(私)Sなんで」と公言する割には、ただ性悪な言葉が羅列されるだけで、本当の意味で性的にMを喜ばせるまでに至らない自称Sな勘違い人間が多い。

所詮、大半の人間は、性的な嗜好もオーソドックス。電マ使ったり、ストッキング破ったり、イラマチオとかスパンキングしとけば、それなりに刺激的でアブノーマルなんて思っているだけの単調なSEX。

20歳の大学生の頃に原作と出会った。その時は、この作品で描かれる性描写に対する理解を得られなかった。変態で片付ければ簡単だったから。けど、あれから十数年経ち、人並みな性体験もしてきて、自分の中のアブノーマルな部分の発見もした上で、この映画と改めて対峙した時に、こんなにも多様な性に理解が及んでいる自分に驚く。(※個人的に、他人を傷付けない限りは、どんな性でも容認すべきと思っている。自分が許容するしないは別次元の問題として。)

非常に繊細な映画だと思った。これだけの大胆な性描写がありながら、汚らしさを感じない。性的な部分って掘り下げれば人間の最も繊細な部分なんだなと改めて気付く。ただ、美女やイケメンとSEXがしたいで片付けられるならそれでいい。けど、それだけじゃ得られないオーガズムもある。人には言えない、理解できない部分。その可視化に挑んだ本作の本域度と、旬の売れっ子俳優でありながらも全裸で腰を振る松坂桃李の体当たりな演技が素晴らしい。
どうでもいいけど、松坂桃李のSEXが垣間見えた。高速ピストンで責め立てる激しい派。こういうのって、いくら演出ありでも日頃の癖は出るもんだから。イク時に、尻の筋肉がリアルに動くところまで徹底して演じて、性描写の抜かりの無さには驚いた。



月9に濡れ場が不要なように、表向きな恋愛ドラマが多い。それはそれでいい。けど、三十路も過ぎれば、それにさえも嘘っぽさを感じてしまう。けど、日活ロマンポルノやVシネのように性行為を悪戯に際立たせるのでなく、真剣に性と向き合っているから、この映画で描かれる性に対して品位すら感じる。『愛の渦』然り、性の根本的な部分を追及しているから、下品な映画と思えない。三浦監督はSEXを描く中に、人間性を取り入れている。その人が特殊な性癖を持ち、満たされることで、どういう感情を抱いているのか。この映画では、SEXの先にあったのは全てが至福さだったが、性を、受け入れ、受け入れられるというのは、特殊であればあるだけ、自分の許容であり、喜びになることをそっと語りかける。相席酒場やクラブでナンパして、そのままホテルに直行のSEXとは次元が違う。

人がSEXする理由を、ギリシア神話では男女の体が一体化された“アンドロギュノス”だったとし、不遜な態度が原因でゼウスによって別々の体に分けられたために、男女は互いの体を求めるようになったという。
動物的ではなく、快楽でもなく、もっと精神的な奥深いところで、受け入れられたい表現としてのSEXというのは、こうも愛おしいものかなと思った。松坂桃李も、疾走した母親のトラウマを埋めるために、様々な性を受け入れ、そこに自分を見出していた。他人を性で満たすことがアイデンティティであった。

好きな男性とのSEXを我慢することで欲求を高める女性にはじまり、プラトン等の知識を擁する知性的な男性に失禁姿を見られることで絶頂を迎える女性、目の前で他人と妻がSEXすることで興奮を覚えるNTR夫婦、痛みを快感と捉えるバイセクシャルな男性、70歳手前で手を握っただけでオーガズムを感じる老女など、アブノーマルな性癖でも静かに許容する松坂桃李の包容力にドギマギしてしまう女性も多いだろう。もはや彼の瞳は不能犯ではない。日本の若手俳優で、最もエロティックな目をしている。これが、ドラマ「ゆとりですが何か?」で30歳を超えた童貞を演じていた俳優と同じだと思えない。

現実には、そこまで性は奥深いものではないし、ある必要もない。けど、自分の欲求を解放したSEX本当にしてる? そんな問いかけを受けたような気がした。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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