映画レビュー

『七つの会議』が掲げる「されどネジ」は日本の労働力賛歌だ!

(C) 2019映画「七つの会議」製作委員会


流石は池井戸潤原作だけあって面白い。ハズレが無い。主演に野村萬斎を起用したのも正解だったろう。地上波テレビで飽きるほど見てきた面子の中での圧倒的な異端な存在感。彼の存在が良い化学反応を示していた。重苦しいはずの社会派サスペンスが、まるで狂言独特のリズミカルなテンポで展開されていく様は見事だった。野村萬斎の動作も、意識下のように狂言に寄せていっているような場面もあったくらいだった。
ぐうたら社員の野村萬斎が何故か解雇も左遷もされずに、彼を蔑ろにした者が社内で不当とも言えるような扱いを受け本社から、その姿を消されていく。不可思議な出来事が次々に起こる巨大企業内部で一体何が起こっているのか、目撃した観客は証人として固唾を飲みながら見守ることしか出来ないが、この謎解きが実に面白い。社販のドーナツすら絡ませてくるのが巧みだし可笑しい。

※注意※
ここからは映画の内容(多少のネタバレ)を含んでおります。
ご覧の際は、十分なご注意とご配慮の上、ご覧頂きますようお願い申し上げます。

結局のところはネジを馬鹿にするなと言ったところか。小さな町工場で作られる確かな品質のネジで、この国は作られている。誰しも心のどこかで理解していることだろうが、仮にこの『七つの会議』のような事態が起これば、「たかがネジ」では済まない国を揺るがす大惨事になり兼ねない、想像しただけでも身震いがする。将来なりたい職業に、YOUTUBERが野球選手よりも上位になる時代だ。得体の知れないネットビジネスとか情報商材で派手な生き方に憧れる若い世代が多いと聞く。しかし、職人が作る技術で世の中は回っている。「たかがネジ」ではない「されどネジ」という日本の労働力への賛歌への共感が、興収初登場から連続首位という想像以上のヒットとなり、胡散臭さが充満する世の中だからこそ、それも必然だったのかも。

[PR]


そして、巨大企業によるデータ改竄や事実の隠蔽も、大きな問題として提示される。
「改竄」「隠蔽」・・・・・・何度聞いたフレーズだろうか。今の日本が抱える問題でもある。ちょうど一年前は某学園に関わる文書改竄だので国会は大騒ぎだった。この映画が虚構であろうとも、妙に興味惹かれ、説得性があるのは、昨今、現実世界でも厚生労働省の統計問題とか、日産のゴーン問題、トランプ大統領のロシア疑惑など、それこそ世界中で真相追究の報道は多くされているわけで、潜在的に組織への不信感がどこかしらあるからなのかも知れない。けど、単純な善悪などの二元論で語るには複雑過ぎるのが社会。この映画だって正義なんて誰にも見い出すことなんて出来ない。何が善で、何か悪なのか? そもそも善悪の問題なのか? ちなみに、是非を問うたり、議論をここでするつもりはない、俺アホだから胸張って語れないんだもの。そういうのは「朝まで生テレビ」に任せよう。ただ、劇中で正義を貫こうとした野村萬斎が最終的にのほほんと生きていたことに救いがあったように思えた。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]





[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. サンボマスター vs My Hair is Bad 男どアホウ夏の陣!日本ロック…
  2. 2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
  3. DA PUMPがSMAPの振付をすることが芸能界で衝撃的である理由
  4. KEYTALKの八木氏はナゼ愛されるのか?その無敵な愛嬌の謎と八木氏のドラムテク…
  5. 『いぬやしき』興行失敗で垣間見える漫画原作映画の限界~世間はエグさに飽きている

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】映画 ビリギャル

    (C) 2015映画「ビリギャル」製作委員会予告編で流れた、聖…

  2. 映画レビュー

    話題の『アリー/スター誕生』に騙されるな!こんなもん涙の一滴も出ない!

    もはや芸能カップルの悲哀物語の教科書とも言える『スター誕生』のリメ…

  3. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ナイスガイズ!

    今年度の賞レースを独占している『ラ・ラ・ランド』で主演を務めた…

  4. 映画レビュー

    『アウトレイジ 最終章』は暴力映画ではなくコメディ映画だった(笑)

    日本人は“不良好きDNA”が流れている。昔悪かった自慢など何の意味…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 4日目ライヴレポート
  2. 邦楽

    第10回 独断で選ぶ素晴らしい邦楽たちTOP10 2018
  3. ライブレポート

    安室奈美恵の引退ツアーを観る!世界中の賛美を彼女に贈りたい!
  4. ライブレポート

    ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 3日目ライヴレポート
  5. 音楽

    【この夏も話題独占】ジャスティン・ビーバーの恋愛遍歴を振り返り!
PAGE TOP