映画レビュー

現代に生き難さを感じる全ての人間に捧げたい傑作『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』

© ROCKinNET.com All rights reserved.


原恵一監督の『オトナ帝国の逆襲』は狙った感じはあったものの、クレヨンしんちゃん映画中でも、日本のアニメ史においても名を残す名作であることは変わりない。当時は相当話題になった。それから十数年、久々に甥っ子の熱望で、しんちゃん映画を観る。意外だった。こんなに完成度が高いのか、しんちゃん映画というは。大人が観るに耐え得るテーマ性と、子供が観て楽しめるギャグ路線と、その両方が気分良くなるオチとが見事に調和している。

春日部に何故か横浜中華街ばりのチャイナタウンがある設定から映画は始まる。そして、最近、マサオの様子がおかしい。後を付けるしんのすけたち。マサオは某道場で「ぷにぷに拳」という技を習っていた。事の流れで、しんのすけたちも道場に弟子入りすることになる。もちろん、しんのすけは、ランという道場の美女目当てであるが。ちょうど、その頃、一度食べたら病み付きになってしまうブラックパンダラーメンが大流行。それを食べると攻撃性が増し、春日部の住民はイライラした人間に溢れ、世知辛さを帯びる。それを、カスカベ防衛隊が解決しようと推理を始めるのだが・・・・・・

すったもんだがあって、ようやく悪の組織を倒したカスカベ防衛隊とランだが、話はそんな単純な勧善懲悪では終わらなかった。ぷにぷに拳の九つの奥義を会得した者だけがぷにぷに拳の聖地で得られるという最終奥義「ぷにぷに真掌」を手にしたランは、悪を倒すために強大な力を酷使する。些細なことも許さない。しんちゃんの父親ひろしの足が臭いのは悪!になってしまうのだ。圧倒的なパワーでもって偏向的な正義を貫徹する。しかし、行き過ぎた正義の暴走は、いつの間にか人々の脅威となっていた。
善悪が入れ替わるストーリーは秀逸だ。例えば、SNSでの私刑なんかもそう。暴行事件があったとする。それを撮影したSNSが事件の決定的証拠となることもある。これは善だと思う。ただし、その犯人の家族構成や親の勤務先まで瞬時に拡散されるのは本当に善と言えようか。善悪は表裏一体であることを諭す。


では、どうしたらいいのか?
ここが流石、しんちゃんである。ジェンカを踊る。これで万事解決。

何を馬鹿げたことをと思う大人こそ頭をぷにぷにしたほうがいい。結局は、そういうこと。世知辛さも、イライラも、自分がどう物事を感じるかの差でしかない。世の中そんなに楽観的でいられるほど甘くはない。確かにそうだ。けど、気楽にジェンカを踊れば気は休まる。これって生き易さの極意かも知れない。
国境を無視して、世界中が繋がって、ジェンカを踊る様子を見ていると、生きやすさの根本が垣間見えてくるようだ。メキシコとの国境に塀を作っても、EUから離脱して難民の受け入れを拒否しても、ジェンカ踊れば万事OK! 安易なメッセージ性が心地良い。しんちゃんは、押し付けがましくないから素晴らしい。
また、しんちゃんに一本取られた。この映画、是非オススメしたい!

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。



 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. アリアナ慈善LIVE「One Love Manchester」を観て感じたこと
  2. ロッキンにサザン13年ぶりの降臨!昨年の桑田ソロに引き続きフェスに出る意味とは!…
  3. エルレ細美が「待った!」転売野放し・・・チケットだけじゃないライヴ物販問題を考え…
  4. 13年ぶりロッキンに出演したサザンが凄かった!ROCK IN JAPAN史上最大…
  5. 初の武道館公演を控えるマイヘア椎木ってナゼ好かれるのか?彼の魅力を挙げてみる!

関連記事

  1. 映画レビュー

    薄暗いシナリオ以上に役者の本域に感銘を受けた『怒り』

    救いのない暗い映画です。最近の邦画はとことん暗く、日本映画の韓国映…

  2. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】沈黙 -サイレンス-

    無信仰者の筆者が何を思って観たらいいか、着目点を絞るのに非常に…

  3. アカデミー賞

    『シェイプ・オブ・ウォーター』の成功の理由は異質との性描写で逃げなかったことにある!

    異物との性描写を逃げないからこそ究極の愛が描けた甘美で倒錯的な…

  4. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】SING/シング

    もしズートピアで『glee』をやったら・・・「My w…

  5. 映画レビュー

    余計な台詞すら削ぎ落とし、戦争を臨場体験させる『ダンケルク』こそ真の戦争映画だ!

    21世紀の娯楽作の王者ノーラン監督が戦争映画を撮るとこうも凄いとい…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

[PR]

人気の記事

  1. ニュース

    アリアナ・グランデのライヴ会場で起こった爆発テロについて
  2. 音楽

    ジャスティン・ビーバー新曲のスペイン語が歌えず大ヒンシュクからのブーム化
  3. ハリウッド

    2018年も大活躍間違いなし“次世代イケメン俳優”を青田刈り!
  4. ハリウッド

    『君の名は。』遂に北米公開で絶賛の嵐!
  5. 音楽

    【この夏も話題独占】ジャスティン・ビーバーの恋愛遍歴を振り返り!
PAGE TOP