映画レビュー

【映画レビュー】『キングダム』旬の俳優で人気漫画を角川映画っぽく味付けし成功



(C) 原泰久/集英社 (C) 2019映画「キングダム」製作委員会

原作が漫画なので内容が希薄なコミックだと揶揄しても仕方ない。にしても、作家性皆無な映画監督である。フィルモグラフィーを見れば、ほとんどが漫画原作の実写化映画なので、そういう専門職人なんだなと感じた。忠実性を重んじてるのだろうか、それだけを考えれば、原作の壮大さの再現を、よくぞ不況の日本映画界で出来たなと感心はする。角川映画のような無骨なスケール感の映画が撮れたことは偉い。そこに旬の俳優を並べれば、少なくとも20代や映画に疎い連中は騙せるから。





この映画で最も得したのは吉沢亮な気もした。歌舞伎の女形顔負けの、妖艶な美しさが印象的だった。元は仮面ライダー出身俳優ではあるものの、そこから今日のブレイクするまでが長いだけあって、演技力が他の共演者と比べて抜きん出ていた気がする。主演の山崎賢人の大袈裟な演技のスカスカ加減をカヴァーできていたと思う(山崎だけではない、橋本環奈も相応に酷かった)。
実は、そう言いつつも、山崎賢人は嫌いじゃない。あんな”もやし”に刀が振り回せるか!という批判が出ているようだが、そこが漫画原作の都合の良さでいいではないか? 2003年の『あずみ』で上戸彩が怒濤の100人斬りした殺陣よりもマシだった気はする。筋肉隆々だと山崎賢人が山崎賢人ではなくなってしまう、彼はこのままでいい。ただ痩せ細って筋繊維が浮き出てるだけで、腹筋割れてるぅ~なんて素っ頓狂なこと抜かす女性には調度良い細さなのだろう。
けど、流石は天下の大将軍ならぬ天下の売れっ子である。大衆映画の主演俳優としては見事なまでの集客力で、公開明けの週末時点での客入りも上々らしいので、興行大失敗に終わった昨年の『ジョジョの奇妙な冒険』のツケは返せるのかなと思う。



三国志を日本人俳優が演じる違和感はあれど、話は少年漫画の王道で分かり易いのも良い。王座奪還という目的も明快で、その過程で次々と彼らに襲い掛かる敵も個性的、ロール・プレイング・ゲームのようで面白い。大衆娯楽としては十分だ。私は漫画に疎い方だが、最近は「海賊王に俺はなる」に代表されるように、成長を描くものが多い気がする。この映画の主人公も「いつか天下の大将軍になる」ことを夢見ている。夢も希望も持ちづらい平成末期に、こういった、のし上がり系の夢実現を掲げるヒロイズムは時代の心を揺さぶるものなのかも知れない。大事なことだ。

とりあえずは序章が終わったという消化不良な映画ではあったけど、今や公開前から●部作なんて言えない時代だ。興行的に失敗して続編がお蔵入りになるのは見っとも無いから。おそらく、この映画は興行さえ30億近くいけば続編は作られるだろう。せっかく10億円以上もかけて丁寧に作ったのだから、是非とも続きが観たいものだ。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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