映画レビュー

『茅ヶ崎物語 ~MY LITTLE HOMETOWN~』からサザンがエロスを歌う必然性を紐解く!

(C) 2017 Tales of CHIGASAKI film committee

面白い映画を観たもんだ。茅ヶ崎という「JUST ANOTHER 田舎町」には何故か音楽家が多いという謎に迫った音楽探訪記であり、日本人と祭りの関係性から、桑田佳祐という希代のミュージシャンを紐解くという邦楽史においても貴重な記録映画である。同時に、(ライヴ・ビューイングを除き)桑田佳祐をスクリーンで観るという稀な体験が出来る時点で貴重な作品だと思う。

出典:japantimes.co.jp

まず、中村八大、永六輔、加山雄三、平尾昌晃、桑田佳祐、Suchmosなど茅ヶ崎出身の音楽家が偉大なことに驚く。なぜか?

サザンの名付け親でもあり、今もワーナー・ミュージックに務める音楽プロモーターの宮治淳一氏がその謎に迫る。茅ヶ崎の歴史から成り立ちまで掘り下げる。何もそこまでしなくてもと思ったのだが、いきなりカウンターパンチを食らうことになる。茅ヶ崎を象徴するモノのひとつとして挙げられる「烏帽子岩」である。茅ヶ崎の役場の担当者によれば、1200万年前に砂や火山岩が堆積し出来た岩で、隆起した理由は分からないという。ただ、烏帽子岩は正式には「姥島(うばじま)」と呼ばれるんだとか。姥がいれば、自ずと「爺」は?と思うだろう。映画内では、実際にあったらしいと推測めいた情報しか得られなかったが、既に“じんじ、ばんば”の話。つまりは、男と女の話が、ここ茅ヶ崎のシンボルには隠されていると知り、驚愕する。早速、性的な意味合いが感じ取れるのだ。

それどころか、厳島神社の神紋は波の真ん中に三角形が二つ描かれており、中央の三角形は下を向いている。▽の形。正に、女性器を表しており、女性のパワーが満ち溢れた場所であると、人類学者の中沢新一氏の案内で知ることになる。
そして、その厳島神社には、芸能と音楽の神様である、裸弁財天が祀られているのだ。何か、茅ヶ崎出身者の才能と由縁するものがあるのかな~と思った。この裸弁財天は、名前の通り、水辺で女性が裸で琵琶を抱いた格好をしており、下半身も見えるような造形をしている。性的なパワー・女性パワーである。女性と音楽の力の融合だという。女性と音楽・・・正しくサザンだ。桑田が日本音楽史において初めて“エロス”を大衆歌にしたのは、こういう由縁がありそうな気がして、サザンのエロが必然だとしたら・・・と思って、ワクワクしてしまった(笑)
そして、水辺と言うのも重要なポイントで、海辺と音楽の関係性にも本作は迫る。

宮治氏は茅ヶ崎の英雄である加山雄三にインタビューする。茅ヶ崎に音楽家が多い理由を、加山は「よく分からない」としつつも、「茅ヶ崎は音楽の波動が良くなる」と言う。その理由は、人間も物質も粒子で成り立っており、すべては波長なのだと。「波の音ひとつとっても波長である」要するに、海に縁深い茅ヶ崎は波の音・リズムの中で生活していると。それは音楽の中で生活していることと同じであるということだ。

現に茅ヶ崎の伝統ある祭りに「浜降祭」がある。一定のリズムを神輿に備え付けられた金具で鳴らしながら、神輿ごと海に入っていく祭りである。浜降祭こそ、“海”と“祭”と“音”で成り立っており、これら三つは切っても切れない関係性と中沢氏は言う。
古代より、自由で不埒な者は「海民」と結び付いており、海から出てくる。音楽に誘われて海から表れた神「安曇磯良(イソラ)」がそうで、中沢氏は桑田佳祐とは安曇磯良なのかもねとほくそ笑む。不埒な人間だからこそ音楽を奏でて自由に生きていく。ここに、個人的ではあるが、茅ヶ崎が芸能の町であるという理由を見出した。その地にある不思議な魅力に地元民も取りつかれているのかなと思った。
Suchmosも必ず終電で茅ヶ崎に帰って来るらしい。どんなに仕事で遅くなっても、翌朝が早くても。地元愛だけでは語り尽くせない、何か土地との運命めいたものを想像する。

浜降祭の神輿が上下する様も、SEXの動きに似ていると。ここでも中沢氏は性的な意味を見出した。そこで、2013年にサザンが活動休止から復活した際の「灼熱のマンピー!!G★SPOT解禁!!」で、本編ラスト「マンピーのG★SPOT」の演出で、巨大なマツタケとアワビの神輿が出てきた様を中沢氏に見せる。「酷いもんだね。けど、最高だね」と評する。結局、日本の祭りは性的な意味合いが強いと言う。現に、愛知県犬山市の大縣神社で行われる豊年祭は、2013年のサザンのライヴと同じく男性器と女性器が担がれ、神奈川の川崎で行われる「かなまら祭り」では「男根神輿」なるものが担がれる。サザンのエロスが大衆化したのは日本の伝統的な祭りから起因してるのかもと思ったりした。

そして、神木竜之介と野村周平によるドラマも織り込まれる。学生時代の宮治氏と桑田佳祐を描いていた。学園祭で桑田がバンドを組んで初めて人前で歌ったとされるエピソードを描いている。
桑田の事務所であるアミューズの役者と歌手で構成された身内ドラマであったが、そんなことはどうでもいい。とにかく、野村周平の桑田らしさったらない。おそらく、桑田が21世紀に生まれていたら、野村周平のように、少し生意気で、滅茶苦茶お調子者であっただろうとさえ思えてくる。野村周平のようにオシャレではなかっただろうにせよ。名演だった、二人とも良かった!

image source:M-ON!Press

そしてラストで烏帽子岩の前で歌う桑田佳祐が素晴らしい。野村周平が演じたドラマで、実際に学園祭の時に歌ったとされる、ビートルズの「Money」だ。(エンドロール後にElvis Presleyの「Blue Suede Shoes」のサービスもあった。)ここ数年、桑田は歌謡曲路線に走ってたが、ロックを歌う桑田の姿こそ彼の真髄だとさえ思った。エンドロールで2007年リリースの「MY LITTLE HOMETOEN」を改めて聴くと、桑田の地元愛、茅ヶ崎の魅力が改めて感じられて感動する。

(文・ROCKinNET.com編集部)
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